「概日時計、概日リズムって…」

生物は、地球の自転によって引き起こされる24時間周期の光や温度等の物理的あるいは餌、天敵等の生物的環境条件の変動のなかで生息し、進化してきました。その歴史のなかで適応と自然淘汰を繰り返し、生物は自身の体内に生化学的計時機構を構築しました。この計時機構を概日時計(およそ一日周期の時計)といいます。この時計を使って生物は、環境時刻を常に認識し、自身の様々な生理活性や活動活性を時々刻々最適なレベルに調節しています。これらの24時間周期の活性変動は、概日リズムと呼ばれています。これまでに調べられた生物のほとんどが概日時計を持っていることからも、その生物学的重要度は高いといえるでしょう。私達ヒトが目覚まし時計がなくても朝目覚め、夜になると眠くなるのは、外が明るくなるから、あるいは暗くなるからではなく、脳にある概日時計からの指令が24時間周期で発せられるからなのです。また光合成を行う植物や藍色細菌は、この時計をつかって、光合成関係遺伝子を一日の決まった時刻に発現させるなどして、環境の明暗サイクルに適応しています。


「藍色細菌・ランソウって…」

藍色細菌は、大気中にまだ酸素がなかったころ(生命進化の初期、35億年ほど前)に大発生し、太陽の光エネルギーを利用し水を分解して還元力を得る現在の植物型の光合成を開発した生物です。現在の酸素に富む地球環境をつくり出した生物です。また細胞共生説では、原始藍色細菌が真核生物に共生したのが葉緑体の祖先だと考えられています。形態も様々で細胞が数珠上に連なった多細胞の糸状菌、球菌、桿菌が存在します。




「発光ランソウって…」

私たちが研究しているランソウの概日時計リズムを知るには、時計遺伝子の発現量(働き具合)を計測しなくてはなりません。しかしこの遺伝子発現量を計量するには、生体から抽出、精製、定量化といった大変な手間と時間を費やします。そこで名古屋大学 近藤孝男教授らにより、生物発光レポーターを用いたランソウ発光モニタリングシステムが構築されました。

発光細菌由来の遺伝子luxABを目的の遺伝子(私たちの場合は時計関係遺伝子)のプロモーター部に連結させることにより、目的遺伝子の発現量がダイレクトに発光量として計測されるということです。しかし発光量は肉眼では確認できないほど微弱なので、特別な高感度カメラによってデータ化しています。